執筆・監修:行政書士 植松悠一郎
長野県大町市を拠点に、建設業許可申請を取り扱う行政書士
元請会社から「建設業許可を取ってほしい」と言われたものの、
「個人事業主でも許可を取れるのか」
「資格を持っていないと無理なのか」
「これまでの経験をどうやって証明するのか」
と悩んでいませんか。
結論からいうと、個人事業主や一人親方でも、必要な要件を満たせば建設業許可を取得できます。
ただし、単に経験や資格があるだけでは足りません。要件を満たしていることを、契約書、請求書、確定申告書、資格証などの資料で証明できるかが重要です。
そもそも自分の工事に許可が必要か分からない方は、先に「建設業許可が必要なケース・不要なケース」の記事をご確認ください。
この記事で分かること
- 建設業許可を取るための主な要件
- 個人事業主や一人親方でも許可を取れるか
- 資格がない場合に許可を取れる可能性
- 財産要件や社会保険の考え方
- 申請前に確認しておきたい証明資料
結論|要件を満たすだけでなく資料で証明する必要がある
長野県は、建設業許可を受けるための主な要件として、経営管理体制、営業所技術者等、誠実性、財産的基礎、欠格要件を挙げています。
また、経営管理体制の一部として、適用対象となる健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、適切な届出をしていることも必要です。
この記事では、小規模事業者が確認しやすいよう、実務上の確認事項を次の6つに整理します。
| 確認項目 | 最初に確認すること |
|---|---|
| 経営管理体制 | 個人事業主や法人役員としての経営経験があるか |
| 営業所技術者等 | 資格または実務経験で技術者要件を満たせるか |
| 財産的基礎 | 自己資本や預金残高などで基準を満たせるか |
| 誠実性・欠格要件 | 許可を受けられない事情がないか |
| 営業所 | 建設業を営む実体のある営業所があるか |
| 社会保険等 | 加入義務がある保険へ適切に加入しているか |
重要なのは、表の項目に「当てはまる」と自分で判断するだけでなく、行政庁が確認できる資料を用意することです。
要件1|適正な経営体制と常勤役員等
建設業許可では、建設業の経営を適正に管理できる体制が求められます。
一般的なケースでは、法人の場合は常勤役員等のうち1人、個人事業主の場合は事業主本人などに、建設業の経営に関する一定の経験が必要です。
もっとも分かりやすい基準は、建設業に関して5年以上、経営業務の管理責任者としての経験があることです。
個人事業主として建設業を5年以上営んできた場合や、建設会社の取締役として5年以上経営に関わってきた場合などが考えられます。
これ以外にも、役員経験と補佐者の体制を組み合わせる方法などがあります。そのため、5年の経験がないからといって、直ちに申請できないと決まるわけではありません。
ただし、次の2つは区別する必要があります。
- 職人や作業員として工事をしてきた経験
- 事業主や役員として建設業を経営してきた経験
現場経験が長くても、経営経験の要件を満たすとは限りません。
また、経営経験を証明する際には、確定申告書だけでなく、工事請負契約書、注文書、請求書、入金記録、法人登記事項証明書などを組み合わせて確認することがあります。
要件2|営業所技術者等
建設業許可を受けるには、許可を受けようとする業種について、一定の資格または実務経験を持つ技術者を営業所ごとに置く必要があります。
以前は一般に「専任技術者」と呼ばれていましたが、現在は一般建設業では「営業所技術者」、特定建設業では「特定営業所技術者」という名称が使われています。これらをまとめて「営業所技術者等」と表記します。
一般建設業では、主に次のいずれかで技術者要件を確認します。
- 許可業種に対応する資格を持っている
- 指定学科を卒業し、必要な実務経験がある
- 許可業種について原則10年以上の実務経験がある
たとえば、施工管理技士、建築士、電気工事士、技能士などの資格が、許可を取りたい業種に対応する場合があります。
資格を持っていなくても、実務経験によって要件を満たせる可能性があります。ただし、必要な経験年数や使える資格は許可業種ごとに異なります。
「建設業を10年以上やっている」というだけではなく、
- どの業種の工事をしてきたか
- どの期間に工事をしていたか
- 契約書や注文書などが残っているか
まで確認する必要があります。
要件3|財産的基礎または金銭的信用
一般建設業の許可では、次のいずれかを満たす必要があります。
- 自己資本が500万円以上ある
- 500万円以上の資金を調達する能力がある
- 許可申請の直前5年間、許可を受けて継続して建設業を営業している
新規申請では、決算書上の自己資本が500万円以上あるか、金融機関の残高証明書などによって500万円以上の資金調達能力を示す方法が一般的です。
「資本金を500万円にしなければならない」「常に口座へ500万円を残さなければならない」という意味ではありません。
法人の場合は直前の決算内容、個人事業主の場合は申請時の財産状況などを確認して、どの方法で要件を証明するか判断します。
なお、特定建設業では、一般建設業より厳しい財産要件が定められています。
要件4|誠実性と欠格要件
建設業許可では、請負契約について不正または不誠実な行為をするおそれがないことが求められます。
法人の場合は法人だけでなく、役員等や支店・営業所の代表者も確認対象になります。個人事業主の場合は、事業主本人や支配人が対象です。
また、破産して復権を得ていない場合、一定の処分や刑罰を受けた場合、暴力団との関係がある場合など、建設業法上の欠格要件に該当すると許可を受けられないことがあります。
過去に罰金や行政処分を受けたことがある場合でも、内容や時期によって判断が異なります。心当たりがある場合は、申請書を作成する前に確認が必要です。
要件5|実体のある営業所
建設業許可では、建設業を営む営業所の実態も確認されます。
建設業法上の営業所とは、本店や支店のほか、見積り、入札、契約締結など、建設工事の請負契約に関する実質的な業務を行う事務所をいいます。
登記簿に本店として記載されているだけで、実際には建設業の営業を行っていない場所は、建設業法上の営業所に該当しない場合があります。
自宅兼事務所だから直ちに許可を取れないわけではありません。
ただし、
- 事務所として使用する権限があるか
- 見積書や契約書を作成・保管できる状態か
- 電話や机など、営業所としての実態があるか
- 他の会社や住居部分との関係を説明できるか
などを確認されることがあります。
長野県では、営業所の実態を確認するための書類を提出し、必要に応じて追加資料を求める場合があると案内しています。
要件6|社会保険等への適切な加入
建設業許可では、健康保険、厚生年金保険、雇用保険について、それぞれの法律に基づく適切な届出が必要です。
ただし、すべての個人事業主が、必ず3種類すべてへ加入しなければならないという意味ではありません。
法人か個人事業主か、従業員を雇っているかなどによって、加入義務が異なります。
たとえば、適用除外の承認を受けて建設国保などへ加入している場合は、健康保険について「適用除外」として扱われる場合があります。
重要なのは、自社が加入対象であるかを確認し、加入義務がある場合は適切に届出をしていることです。
経験があっても「証明資料」がないと申請が進めにくくなる
建設業許可申請で特に問題になりやすいのが、経験はあるものの、当時の資料が残っていないケースです。
長野県では、申請書だけでなく、経営経験、常勤性、営業所技術者等の資格・実務経験、営業所の実態などを確認するための資料が必要とされています。
確認しておきたい資料の例は次のとおりです。
| 証明する内容 | 確認しておきたい資料の例 |
|---|---|
| 経営経験 | 確定申告書、法人登記簿、工事請負契約書、注文書、請求書、入金記録 |
| 技術者要件 | 資格証、卒業証明書、実務経験証明書、工事関係資料 |
| 常勤性 | 社会保険関係資料、雇用・給与関係資料など |
| 財産要件 | 決算書、貸借対照表、預金残高証明書など |
| 営業所 | 使用権限や営業所の状態を確認できる資料 |
| 社会保険 | 健康保険、厚生年金、雇用保険の加入状況が分かる資料 |
必要な資料は、法人・個人の別、経験した会社、許可業種、証明する期間によって変わります。
昔の請求書や契約書を処分してしまうと、実際には十分な経験があっても証明が難しくなることがあります。
建設業許可を検討したら最初に確認する順番
許可申請を検討し始めたら、次の順番で確認すると効率的です。
1.取りたい許可業種を確認する
まず、実際に請け負っている工事が、建設業法上のどの業種に当たるかを確認します。
工事名や会社での呼び方だけではなく、実際の施工内容で判断することが重要です。
2.経営経験を持つ人を確認する
個人事業主としての経験、法人役員としての経験、前職での役職などを整理します。
3.営業所技術者等の候補を確認する
資格証や過去の実務経験を確認し、取りたい許可業種に対応できる人がいるかを確認します。
4.証明資料を集める
確定申告書、契約書、注文書、請求書、通帳、資格証など、過去の資料を集めます。
5.財産・営業所・社会保険を確認する
決算内容、預金残高、営業所の使用状況、社会保険等の加入状況を確認します。
この順番で確認すると、「申請書を作り始めた後に重要な要件を満たせないことが分かった」という事態を避けやすくなります。
まとめ|建設業許可は要件より証明方法で詰まりやすい
建設業許可を取るには、主に次の点を確認する必要があります。
- 適正な経営体制
- 営業所技術者等
- 財産的基礎
- 誠実性・欠格要件
- 営業所の実態
- 社会保険等への適切な加入
ただし、実務上は「要件があるか」だけでなく、その要件を手元の資料で証明できるかが重要です。
特に、個人事業主や一人親方の場合は、確定申告書、請求書、注文書、入金記録などを早めに確認してください。
元請から許可取得を求められている場合や、500万円以上の工事を受ける予定がある場合は、契約の直前になってからではなく、早い段階で申請可能性を確認することをおすすめします。
当事務所では、現在の経験、資格、工事内容、手元に残っている資料を確認し、建設業許可を取得できる見通しを整理します。
参考にした公的情報
- 長野県「建設業許可を受けるための要件」
- 長野県「許可申請書類等一覧」
建設業許可が取れるか分からない方へ
当事務所では、大町市を拠点に、白馬村・安曇野市周辺を地域密着エリアとしながら、長野県内全域の建設業許可に対応しています。
「自分の経営経験で要件を満たせるか」「資格がなくても申請できるか」「手元の資料で経験を証明できるか」など、許可が取れるか分からない段階からご相談いただけます。
初回相談は無料です。電話・メール・オンライン等を活用し、来所せずに相談を進めることも可能です。

