長野県では、少子高齢化や人口減少による人手不足が深刻化しており、多くの産業で労働力の確保が課題となっています。特に、介護や農業、建設業、製造業といった分野では、外国人労働者の活躍が期待されており、特定技能ビザを活用した採用が進んでいます。例えば、長野県の広大な農地での収穫作業や、伝統的な製造業の現場で外国人が即戦力として活躍している事例も増えています。
さらに、観光業も特定技能ビザの活用が注目されている分野の一つです。長野県は多くの観光客が訪れる地域であり、特にスキー場や温泉地、宿泊施設などでは、外国人観光客の増加に対応するための労働力が求められています。特定技能ビザを取得した外国人労働者が、宿泊施設での接客業務やスキー場での運営サポートなどで活躍する例も増えており、地域経済の活性化に寄与しています。
特定技能ビザの導入により、こうした分野での労働力不足を補うだけでなく、地域の活性化にも寄与する可能性があります。一方で、受入機関には外国人労働者の生活や職場環境を支援する責任が求められるため、制度の適切な運用が鍵となります。
特定技能ビザとは?
特定技能ビザ(在留資格「特定技能」)は、2019年4月に施行された新しい在留資格です。深刻な人手不足が続く日本の産業分野において、一定の専門性や技能を持つ外国人が即戦力として活躍できることを目的としています。このビザは、日本での就労が可能な在留資格の一つで、特定の条件を満たした外国人に発給されます。
特定技能ビザは、「特定技能1号」と「特定技能2号」に分かれており、それぞれ対象分野や在留期間、家族の帯同可否などが異なります。
- 特定技能1号: 即戦力としての技能を有し、14分野(例:介護、建設、外食業など)での就労が可能。在留期間は最長5年で、家族の帯同は原則不可。
- 特定技能2号: 高度な技能を有する分野(現在は建設と造船のみ)での就労が可能。在留期間の更新に制限がなく、家族の帯同が認められます。
特定技能ビザの特徴
特定技能ビザの最大の特徴は、産業分野ごとに設定された「特定技能評価試験」に合格する必要があることです。この試験では、業務に必要な技能や知識が問われます。また、日常会話ができる程度の日本語能力(日本語能力試験N4以上)が求められます。
さらに、特定技能ビザでは、受入機関(雇用主)にも外国人労働者の生活支援や労働環境の整備が義務付けられており、従来の技能実習制度とは異なる新しい枠組みが採用されています。
特定技能ビザを取得するための条件
特定技能ビザを取得するためには、外国人労働者と受入機関の双方が特定の条件を満たす必要があります。以下に、それぞれの条件を詳しく説明します。
1. 外国人労働者の条件
外国人が特定技能ビザを取得するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 特定技能評価試験の合格
業種ごとに実施される技能試験に合格することが必要です。例えば、介護分野であれば「介護技能評価試験」、外食業であれば「外食業技能測定試験」などが該当します。試験では、該当分野で即戦力として働ける技能を確認されます。 - 日本語能力試験の合格
日本語能力試験(JLPT)のN4以上、または特定技能に関連する日本語試験(JFT-Basic)の合格が必要です。日常会話ができ、職場での基本的なコミュニケーションが取れるレベルが求められます。 - 年齢制限
特定技能ビザの申請には18歳以上であることが条件です。 - 健康状態
日本での就労に支障がない健康状態であることが求められます。 - 過去の在留状況
技能実習から特定技能への移行も可能ですが、不法滞在や在留資格違反の履歴がある場合、ビザの取得は難しくなります。
2. 受入機関の条件
受入機関(企業や事業者)は、特定技能ビザを取得する外国人を雇用するため、以下の条件を満たさなければなりません。
- 適正な雇用契約の締結
受け入れ企業は、賃金や労働条件が日本人と同等以上であることを保証する契約を締結する必要があります。 - 労働環境の整備
外国人労働者が職場や日常生活で問題なく働ける環境を提供することが求められます。 - 支援計画の策定と実施
受入機関は、外国人労働者の生活や業務への適応を支援するため、支援計画を策定・実施する義務があります。主な支援内容は以下の通りです。- 生活オリエンテーション: 日本での生活ルールやマナーを説明。
- 日本語学習の支援: 業務や日常生活に必要な日本語の学習をサポート。
- 相談窓口の設置: 労働者が職場や生活での問題を相談できる体制を整備。
- 緊急時の対応: 病気や災害時の迅速な対応。
- 公的手続きの補助: 市役所での住民登録や銀行口座の開設などの支援。
支援計画の内容は、入国管理局への提出が義務付けられており、不備がある場合は受入れが認められません。
- 登録支援機関との連携(必要に応じて)
受入機関が自社で十分な支援を提供できない場合、登録支援機関に支援業務を委託することができます。登録支援機関は、外国人の支援に関する専門知識を持ち、入国管理局に登録された組織です。
登録支援機関を活用することで、以下のような支援が確実に行われます。- 日本語学習の計画策定。
- 外国人労働者の生活支援。
- 定期的な面談や状況確認。
なお、支援業務を委託する場合でも、受入機関には最終的な責任があります。登録支援機関を利用する場合、業務委託契約を結び、適切に役割分担を行う必要があります。
- 法令遵守
労働基準法、入管法、その他関連する法令を遵守することが求められます。 - 受入れの実績管理
過去に不法就労や違法な労働条件を提供した記録がないことが必要です。
まとめ
特定技能ビザは、日本での就労を希望する外国人にとって新たなチャンスを提供する一方、受入機関には適切な支援体制の構築と法令遵守が求められます。これらの条件を満たすことで、外国人労働者が安心して働き、日本社会に貢献できる仕組みが実現します。
行政書士として、支援計画の策定や登録支援機関との連携を含む包括的なサポートを提供し、外国人労働者と受入機関の双方が円滑に制度を活用できるよう努めてまいります。